2025/06/05
【建設業トラブル対応】一人親方との仕事で発注者が負う責任とは?(納期遅延・怪我のケース)
建設現場や工事業務で「一人親方」に仕事を委託するケースはよくあります。しかし、トラブルが起きたときに「発注した法人の責任はどこまで及ぶのか?」と不安に感じたことはありませんか?
- 一人親方が納期を遅延した場合
- 一人親方が工具の誤使用で怪我をした場合
という2つのケースをもとに、発注元の法人が負う可能性のある法的責任について解説します。
① 一人親方が納期を遅延した場合
▶注文主との関係
一人親方が納期を遅延したことにより、注文主への納期が遅れた場合は、注文主への責任は発注元の法人が負います。
▶一人親方との関係
原則:一人親方が責任を負う
一人親方との契約は、基本的に「請負契約(または準委任契約)」として結ばれます。請負契約で は、成果物を完成させる義務があり、納期もその一部。よって納期を守れなかった場合、納期遅延により発注元の法人に生じた損害について、一人親方に請求できる場合があります。
例外:発注元の法人側が責任を問われるケース
以下のようなケースでは、一人親方に生じた損害について発注者側にも責任が認められるケースや、発注元に生じた損害について一人親方に責任を問えない可能性があります:
- 資材の支給が遅れた
- 納期が明確に定められていなかった
② 一人親方が工具を誤使用して怪我をした場合
原則:一人親方の自己責任
一人親方は原則「労働者」ではなく、個人事業主です。そのため、通常の社員のように会社側が労災保険を適用したり、安全配慮義務を負ったりする立場にはありません。
つまり、工具の誤使用による怪我は本人の自己責任とされるのが基本です。
ただし例外あり:発注者が責任を問われる場合
以下のような状況では、法人側に安全配慮義務違反等の法的責任が発生する可能性があります。
1. 実質的に「労働者」として扱っていた場合
- 時間・場所・作業方法を細かく指示していた
- 法人が工具を貸与・管理していた
- 一人親方が専属的に働いていた
2. 危険な工具や作業環境を提供していた場合
- 明らかに整備不良な工具を渡していた
- 高所作業に安全対策が施されていなかった
実務でのリスク管理ポイント
- 業務委託契約書を明確に作成する
- 納期、作業範囲、責任の所在を明記
- 「指示のしすぎ」に注意する
- 実態が労働者的にならないよう配慮
- 安全確認書・工具取扱い説明書などの記録を残す
- 特別加入(労災)の案内を行う
一人親方だからといって、すべてが「自己責任」で済むわけではありません。実態に応じた契約・現場運営・リスク管理が、発注者の信頼と持続的な取引に直結します。